夏草の思い出


朝 家の前で迷い犬を見た。
雨に打たれ 足早に通り過ぎる 年老いたビーグル。

「おまえ どこの子?」
声をかけたけれど ちらりとも見ないで行ってしまった。
自分の行き場所が わかっているかのように。

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あの子は 無事にお家に帰り着いただろうか。

そして思い出してしまった もう一人の「あの子」。
迷い犬だった「あの子」。 我が家の2代目の犬となった 「あの子」。

小学生だった私と 20キロ近くもあった大きな茶色いMIX犬。
「あの子」と私の 遠い夏草の思い出。






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あの子の散歩は 子どもの私たちの仕事だった。

いつもは近所で用を足させるくらいの短い散歩だったけれど たまに気が向くと 二人だけで少し離れた土手まで出かけた。

生い茂る背の高い夏草。照りつける頭上の太陽。
誰もいない河原で あの子を離した。

草をかき分け 喜んで走り去る あの子。
みるみる遠くなる後ろ姿。


不安になって 大声で あの子の名前を呼んだ。
振り返り こっちを見ても 戻ってこようとしない あの子。
追いかけると 追いかけっこを楽しんでいるかのように するりと逃げた。


悔しくなって 少し意地悪をしたくなった。
草の中にしゃがむと 小学生の少女の頭は すっぽりと草の海に沈んだ。

むせ返るような夏草の匂い。
見えるのは 目の前の夏草と 頭の上の太陽だけ。
息をこらして じっとする。
世界には自分一人しかいないような 不思議な時間と空間。


でも寂しくはなかった。
やがて聞こえてくる ザッザッという足音。ハッハッという荒い息遣い。

あの子は 私を探して必ず戻ってきた。
私の姿を見つけると 尻尾を振って大喜びで飛びついてきた。

押し倒される 小学生の私。
数年ぶりの再会を果たしたかのように 堅く抱き合う二人。
幸せな あの一瞬。

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こんなに幸せな思い出なのに 思い出すときはなぜかいつも泣きたくなる。

あの子はフィラリアで死んでしまった。

まだフィラリアの薬も出始めたばかりの時代。
薬を飲ませて予防するなんて 珍しい時代。
ある朝 目覚めると たくさんたくさん血を吐いて死んでいた。
突然の死。前日の夕方まで元気で 散歩を催促して吠えていたのに。


大好きだったよ。今でも大好きだよ。「ケン」。

でも いつかきっとまた会えるよね。
虹の橋のたもとで また私の姿を見つけたら あの時のように走ってきてくれるよね。

それまで 少しの間 バイバイ。


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今はね この子たちがいるから。

いてくれるから。

by kuro_emon | 2006-04-25 23:20 | まじめな話 | Comments(4)

Commented by eruma at 2006-04-26 22:17 x
詩・・詩・・・詩人ですなぁ~(@_@) パチクリ・・・。。。

パクリかと思いましたよ。。
それとも オチが 付くんかなぁ~?とか。。

そうだったのね。(^^*
思い出の中に くっきりと浮かびあがってくる ケン君。
せつない 別れをしたんですね(;_;)

それから ○十年。こうやって いつも思い出してもらえるなんて 幸せもんだね! アルロイ君 最高の癒し犬ですしね(^^

私・・も 辛い別れをした経験があります。
それも 2回も。。思い出したくない・・・思い出。
心の中で 供養を続けている 私です。

そういった時代を生きたワンコ達。 そのワンコ達の分まで 現役ワンコちゃん達には 長生きして しあわせ~になってもらわないとね!(^^*
Commented by ひろぼう at 2006-04-26 23:25 x
いつも明るい母さんの胸の奥深くにしまわれてた大切な思い出。
間違いなく「ケン」くんは母さんたちと過ごしてた日々は幸せでしたよ!
そして母さんの中で、アルロイくんたちの中で彼は永久に生き続けてますよね(*^^*)
「ケン」くんの生まれ変わりかもしれないアルロイくんたちと過ごす楽しい日々が「ケン」くんからの素敵な贈り物かもしれないですね♪

運命の出会いと悲しい別れ・・・それまでの限られた期間を人間もワンコ
も充実して過ごせるのが一番の幸せかな、と最近ようやく私も思えるように
なってきました。
一緒に素敵な時間をワンコたちと過ごしたいですよね(o^^o)

あ、なんか今日の私のコメントがいつになくマトモ系かも(笑)

Commented by くろ母 at 2006-04-27 09:07 x
>エルマさん
あはは~( ̄▽ ̄;)ゞ パクリかと思いました?
オチもない、まともすぎる展開でスミマセーン!
まあ、年に1度くらいは真面目な日があってもいいんじゃないかと。。。
(あ!そーいや、明日でちょうどブログ開設1年だったよ!)

エルマさんもお辛い思い出があるんですね。。。ネコちゃんでしたっけ?
ここを読んでくださっている方たちは皆さん動物好きの方たちばかりなので、
きっとそれぞれ胸に秘めた思い出がおありなんですよね~。
私たちにできるのは、今いる「この子」たちを大切にしてあげること。。。
それが過去の子たちへの供養につながるんですよね、きっと。

こんなしょーもない自己満足日記にレスしてくださって、ありがとうございました!(^^*
Commented by くろ母 at 2006-04-27 09:08 x
>ひろぼうさん
ゴメンね~。こんな重たい日記、さぞコメント付けにくかったでしょーに★
それに、文太クンとの悲しい別れも思い出させてしまったね、きっと。。。

うんうん、幸せって、時の長さとは関係ないよね。
たとえ短い期間でも、精一杯愛してあげればそれが1番の幸せなんだよね。
文太クンも、ひろぼうさんのおうちの子になれて、絶対幸せだったと思うよー!
そのために生まれてきたんだよ、文太クンは★
あ、もっちろんガックンもだけどね♪(o^-')b


あはは、私もいつになくまともなレスかも~照れるなぁ。。。( ̄∀ ̄;)ゞ(←どこがじゃ?)
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